気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

食い物の恨みは恐ろしい

 幼稚園くらいの頃、スーパーでイチゴスペシャルを買ってもらい、私は『わーい! 家帰ったら、食うでぇ~』

 と、母の運転する自転車の後ろでウピウピしていた。

 しかし、母は真っすぐ家に帰らないで途中でどこかの家に寄って行った。

 そこには、その家の子が庭に居た。

 母はそれを見るや否や、私のイチゴスペシャルを黙って買い物袋から取り出し、その子にあげた。

『えぇ、何故?!(´;ω;`)』

 とか思ったけど、私は空気を読んで(?)黙っていた。

 ちなみにその家には入る事もなく、ちょっと話をして終わった程度で、帰り道に母親に理由を尋ねると、

「だって、何もないんじゃかわいそうじゃない」

 とか、

「何かあげなくちゃって思ったから……」

 とか、そんな事を言われた。(うろ覚え)

 

 そして当たり前の様に、その後まっすぐ家に帰り、次の日になってもイチゴスペシャルは買ってもらえなかった。

 というか、多分その日からしばらくイチゴスペシャルを食べる事はなかった。

 ……と思う。

 なんせうろ覚えである。買ってもらったのがイチゴスペシャルかも怪しいし。

 だからすぐ買ってもらえた可能性はある。

 でも何となくだが、スーパーに置いてあったのが、自分が買ってもらえた1個きりだった様な、当時はあまり置いてない商品だった様な……。

 って記憶がある様な……?

 

 そして如何せん私の母親だ。

 自分の子供の気持ちよりも、他人の目を気にして行動する傾向があるし、そもそも他者の気持ちなんて考えられない人だ。

 更にヤツはこういう物事をすぐ忘れる。

 そんなヤツが、時がたてば再入荷される商品であっても、自分のやらかした事を思い出して買って帰るなどという気の利いた行動をするだろうか?

 と考えると、嫌な記憶は残りやすいと言えど、母親が子供に対してフォローした可能性は低い。

 という結論が出るのだが、まぁ、たかがイチゴスペシャルである。

 成人しのうのうと一人暮らしを満喫する今の私にとっては、すぐに食べられる品なのだ。

 ただ、子供の頃はそうではないのだ。

 数の多い物を分け与えるとか、そういうのだったら子供の私でも納得できたと思うんだけどなぁ……。