気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

悪い子には罰を与える

 多くの色んな人……自分の事すら上手くできない人もいるトイレは、毎日掃除はされていなかった。

 多分週に数回、酷くて一回程度だったのかも。血の染みや私が吐き戻した跡が何日か残っていたから。

 トイレに鍵はなかった。トイレの鍵で首吊りした人がいるから取り外したそうだ。

 手洗い場に石鹸もなかった。お湯も出なかったから冬だったけど水だけ使って手や顔を洗った。

 同じ病棟に風邪を引いた人がいるからと、二週間ほどお風呂に入れさせてくれなかった。

 身の回りの事ができる人を含めて。

 身の回りの事ができない人の下着が排泄物で汚れっぱなしだった。この人の世話をする人がいないからだ。

 薬を飲む時間、流れ作業で看護師が患者に薬を口に入れていったのだが、それに使っている用紙の端は他の患者の唾液で汚れていっているのを最後まで取り替えないで使っていた。

 私が風邪を引いて動けなくなった時の食事は、何故か体が不自由で食堂に行けないお年寄りと一緒だった。

 風邪、うつるリスクが高くなると思うけど。

 一日の大半を狭い部屋に閉じ込められている人がいた。私は見なかったが、人づてにベッドに固定されている人もいると聞いた。

 そもそもあの閉鎖病棟が狭い世界だが。

 何週間か過ぎた頃、私は金縛りにあって足を弄られる苦痛を伴うナニカを見た。

 夢だったかもしれないし、実際に生理学的な金縛りにあってる時に、患者か看護師が私の足を弄ったのかもしれないが。

 そしてあの中には、何年も退院できない人がいた。

 

 これは自殺未遂で緊急入院した先の病院で起きた事だ。

 私は未だにこの時の事を思い出すといい気分ではない。

 だけど私はこの出来事を経験した事と、自分の事や母の事があったから、現在の日本の医療に疑問を覚えるようになる。

 私が入院していた先は、まるで苦しみながら死を待つ地獄のような場所だった。

 もちろん本物の地獄よりずっと優しい。空調は効いているし食事も出る。

 だけど真綿で首を絞められているような、そんな場所だった。

 入って来た人にストレスを与えて「二度と面倒な事しないか、早く死ねよ。こっちの手間が増えんだよ」という事を言ってるんだなと思うようになった。

 医療はただ治療や延命をするだけで、人を幸せにする事を目的として動いていない。

 苦しんでいる人を余計苦しませて、直るかどうか分からない状況で現状維持し、死という選択も与えないのが現実だ。