気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

終活

 私の終活歴は長い方だと思う。何せ十代後半の頃からやっていたのだから。

 とは言っても初期の頃やっていた終活は、はいつ死んでもかまわない様、死んだ後の遺品整理が楽な様、とことん物を捨てまくっていくタイプのものだった。

 

 私が死んだ後、親が私の写真を見て悲しむのか。と思うと気持ち悪かったから、私の写っている写真は全て切って捨てた。

 親が残しておいた、私が幼稚園の頃に書いた親への手紙も、母親にプレゼントした手作りのブローチも、全部捨てた。

 それに加えて「掃除が楽になるように」という理由で物を減らしていたのもあって、私の部屋はほぼ空っぽになった時もあった。

 

 もちろん両親は、写真や思い出の品が捨てられた事に気が付かなかっただろう。私の異常なまでの『物を減らす』という行動が出ていた時期、両親が何かした気配を感じなかったし。

 それに両親の性格もそうだが、思い出の品というのは普段目に付かない場所にあるものなので、なくなっていても気が付きにくい。

 更にその頃私達は広めのアパートに暮らしていたので、私は自分の部屋を持てていた。

 その部屋の中に思い出の品とやらを持って来ては、ゴミ袋(ちなみに透明から半透明の袋じゃないと出せなくなった後の話だ)の中に外から見てあまり目立たない様に詰めていたので、私の行動に異変を感じるとか、私の部屋から出るごみ袋を注意して見るとかしない限りは、少なくともすぐには気が付けないと思っている。

 それ所か、あの人達は娘が写真を捨てていた事を、数年、もしくは今現在も気が付いていない可能性すらある。

 

 お母さんは自ら命を絶ったその瞬間ですら、何一つ気が付いていなかったのかもしれない。

 

 まぁ、さすがに写真がなくなったのは、今はもう気が付いているだろうとは思うし、当時すぐに気が付いていても、何をしたらいいか分からなかった可能性もある。が、一切気が付いていない可能性があるというのも虚しいな。