気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

禁忌

 17歳くらいだっただろうか? 小説家になる夢を諦めた。
 理由は他人に会う事ができないから。
 いくら頑張ってみた所で誰かに会う事が出来なければ、それを仕事にする事はできない。

 それでも当時インターネットを使ってブログ等をやっていたら、商業目的ではない小説を書いて公開していたかもしれないが、どちらにせよ多感な年頃だったので現実通りにすっぽり諦め、途中まで書いていた何一つ完結していない小説を綺麗サッパリ処分していただろう。

 

 それから時が流れ、その間にもう一つの夢である『結婚』や『子供』も無理なのだな。となっていった。
 理由は初め漠然としていたと思う。

 身体中自分で切りつけている自分は、母親になれない。
 母親が嫌いな自分は、母親にはなれない。

 と、そんな感じだったと思う。

 それが徐々に情報を得て、よく回らない頭で何年も考えていって、段々とはっきりとした『やってはいけない理由』が生まれていったのだ。

 私には経済力がない。そして精神を病んでいる。
 その理由には、恐らく様々な因子があるが、発達障害などに似た症状が出ている事があげられる。
 その私が子供を生んだら、おそらく高い確率で子供に遺伝してしまうのではないか?
 もちろん遺伝しない子供も産まれるかもしれない。しかし私は私の病気で手一杯で、定型発達の子供すら恐らくうまく育てられない。
 それに子供が悲しんでいる時に、サッと「辛かったね」とか「悲しかったね」が言えないかもしれない。何か問題が起きた時に、どう対応したらいいかでパニックになるかもしれない。
 悲しんでるなら抱きしめればいいとか、その程度の行動すら取れないかもしれない。

 だって、私の親がそれらの事をできていたとは言い難いもの。

 そういえば忘れているだけな気がするけど、悲しい時とか辛い時に、親の方から率先して抱きしめてくれた記憶がない様な気もするし。
 それが実際にあった事なのか、もし実際にあった事だとして、それが常識の範囲ではどの程度の事なのかハッキリとしないが、何にせよ、自分の両親を見ていると、その子供である私が、まともに子育てできるの?
 となるし、私みたいに辛い思いをさせてしまう確率が高いな。となるのだ。

 それに、我が家が家族として破綻しているのは、無茶な家族計画の可能性が高い。
 私はともかく、仕事等がある程度できる両親であれば、子供を一人、私の姉を生んだ所で避妊をしていれば、ここまで酷くはならなかったはずなのだから。

 ならば、私は親を反面教師にしよう。
 両親、特に母親と同じような行動は避けよう。
 だから私は子供は作らない。絶対にだ。

 と、いう事で、ストレスになるような事はなるべく避け、ついでに万が一の時の為に、せっせと避妊に対する知識を付けて行った。
 こうして、オギノ式に頼ってはいけない。むしろあれは妊娠したい時に使う方法であり、避妊にはコンドーム+ピルの合わせ技、そして、何かあった時の為のアフターピル

 という事を学んだ。

 しかし、それは無駄だったかもしれない。
 なにせ私には出会いがない。
 そして出会いを求めて彷徨うような奴でもない。
 だから私はすっかり魔法使いが板につき、あともう少しで妖精になる予定である。
 時々虚しくなるが、二次元の可愛いお姉ちゃんとカッコイイお兄ちゃんは好きなので、脳内妄想で満たされてはいる。

 でも、出会いがない様な奴でよかったなとは思う。
 だって恋愛って、依存性の高い違法薬物と同じですわ。
 多分一度ハマってしまったら、私は中毒になって抜け出せなくなってしまうと思う。
 だから出会いがなかったのも、私にとってはラッキーだった。
 ついでにオタク文化がこの国で栄えていたのも、ラッキーだった。