気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

老人ホームの清掃①

 就労移行支援事業所に通っている時、就労移行の職員さんも一緒に参加してくれるタイプの実習をする機会があり、ある日、そのタイプの実習で有料老人ホームの清掃ができる話が出てきて、見学者を募集していた。

 私は、老人ホームでは長く仕事をする事はできないな。とは思っていたが、仕事内容には興味があったので見学に行って話を聞く事にした。

 企業の話では、障害者個人を雇用契約をする予定はないが、就労移行事業との雇用契約をし、就労移行に通っている人が実習でき、お金も少ないがもらえるようにする。

 という感じだったかと思う。

 仕事の内容も初めは簡単な床掃除、ゆくゆくはトイレ掃除などもしてもらいたいという物で、短期間でやってみてもいいかな?

 と思えたので、私の担当の就労移行の職員さんに、私がここで長く勤められない理由を相談したうえで、短期間実習する事になった。

 

 実習に申し込んだ利用者は私含めて二人。

 体験実習の日、もう一人の利用者が体調不良の為、私と就労移行職員・Aさん(仮)の二人で老人ホームに向かった。

 しかし玄関は、番号を押して開けるタイプの電子ロックが掛かっていて開かない。

 前回来た時はこんな物はなかったのだが……。

 近くに『土日はこちらのボタンを押してください』という様な貼り紙があったが、今は土日でもないし……。

 と、少々Aさんと一緒に悩んでいると丁度人が出てきて、事情を説明したら「ボタンを押して呼び出してください」と、割と冷たくあしらわれた。

 こうして何とか中に入った私達は主任(主に事務的な仕事をしている、この老人ホーム内では多分一番偉い人だが、肩書を忘れてしまったのでこの先この人の事は主任と書く)と会い、作業着に着かえた後清掃をする場所に移動した。

老人ホームの清掃②