気が付かれなかった取り替え子

ここは、とある人物の出来事が手記として現れる隙間の世界です

ファーストキス

 私のファーストキスは、相手が人間ならば父親が相手だった。

 理由は至って健全的なものだ。

 父親と姉が、母の色付きリップクリームを塗っていて、「これは口紅じゃないよ」なんて言う父親を見ていたら、何となく「キスしてあげようか?」と言ってしまったのが切っ掛けだ。

 もちろんちゃんと唇にキスした。六歳とかそのくらいの頃の出来事だ。

 

 ただ、それから人間にキスする機会は今日に至るまで一切なかった。

 

 

 私の好きなゲーム実況者が、ゲーム実況の中で「リアルな恋愛なんか求めてねーんだから、誰も」などと言っていたが、まったくもってその通りだと思う。

 現実なんて夢も希望もないものだ。しかし、だ……なんだろうか? この虚しさとか世知辛さとかは。

 少しは夢を見てもいいじゃないか。

 

 私はぬいぐるみにキスしている事はある。

 とはいっても、顔を押し付けている感じなのでキスっぽくはないが。

 だが、私は人間と、好きな男とキスがしたいんだ。

 ぬいぐるみではなく、父親でもなく、ちゃんと好きな人と、キスがしたかったー!!!!!!!!!!あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 と、時々なる。

 しかし、私が好きな相手(人間)とキスをする事は、この先も叶う事がないだろう。

 多分、長々と生きて八十歳くらいになった時が来ても、「私、殿方とキスした事ないわ~」とか言っちゃっているんだろうな……。

 と思っているし、その未来はほぼ確実にやって来る。

 しかし、万が一にも『好きな相手とのキス』という究極のミッションが達成された暁には、意気揚々とここに書いて自慢しているんだろうよ。

 

 しかしだ、その前に『愛の告白』イベントを達成しなくてはな……。

 達成、できそうな状況はあったけど、結局達成できなかったんだよな。

 なんだこの虚しさは……。

 

 とかなっているので、少なくともしばらくは私に色恋沙汰はないんだろうな。